泌尿器科
尿路結石
【尿道炎】
男性の尿道炎は性行為でうつる病気、すなわち性行為感染症の一種で、原因筋が淋菌であるものが淋病(淋菌性尿道炎)です。
淋菌以外でも尿道炎が起こり(非淋菌性尿道炎)、このうち半数以上はクラミジアが原因と言われています。
クラミジアというのは、細菌とウイルスの中間的な存在で、尿道炎の原因となるものはクラミジア.トラコマティスです。これは結膜炎の原因にもなりますが、肺炎の一種であるオウム病の原因となるクラミジアとは別の種類です。
感染してから症状が起こるまでの潜伏期間は、淋菌性の場合は2日から7日と短く、非淋菌性の場合は1週間から3週間と長くなります。
症状は淋菌性の場合、熱感を従う排尿痛と尿道からの膿の排出が特徴的です。
非淋菌性の場合では症状は軽く、尿道のかゆみ程度のこともありますが、炎症が前立腺に及ぶと長びきますので、完全に治ったと判断されるまで治療を続ける必要があります。淋菌やクラミジアが女性にうつると、子宮頚管炎や膣炎をおこし、膿性のおりものが増えてきますが、男性に比べ症状の軽いことが多いので放置されがちです。しかし、卵管炎を起こすと不妊症や子宮外妊娠の原因となりえますので、
パートナーが尿道炎にかかっている場合は必ず検査し、必要な治療を受けることが大切です。
尿路感染症(膀胱炎、腎盂賢炎、尿道炎)
【尿失禁】
自分の意志に反して尿が漏れてしまうことを尿失禁といいますが、これはいくつかの種類に分けられ治療法が違ってきますので、まずどの種類かを知ることが大切です。
女性にもっとも多いのは腹圧性尿失禁で、咳やくしゃみ、運動した時など腹圧がかかった時に漏れるもので、出産や加齢により尿道の周りの筋肉が弱くなって起こります。
切迫性尿失禁は尿意をもよおすとトイレまで間に合わないタイプで、急性膀胱炎の時や神経系の病気で起こることがあります。
溢流性(いつりゅうせい)尿失禁というのは、尿の出が悪く、残尿が多くなってあふれ出るもの、前立腺肥大症によるものが代表的です。
薬物療法としては、切迫性尿失禁には膀胱の興奮を静める薬、腹圧性尿失禁には尿道の収縮を強める薬が使われます。
腹圧性尿失禁では運動療法も大切です。
骨盤の底部で内臓を支えていぅ筋肉を総称して骨盤底筋といいますが、女性ではこの骨盤底筋の達が悪いうえに尿道が短く、また妊娠や出産で骨盤底筋に負担がかかります。
骨盤底筋を自分自身で鍛え、尿道を強くしめられるようにすることで軽い場合は治ることもあります。
薬物療法や運動療法で改善しないような重症の尿失禁には膀胱や尿道を糸で吊り上げる手術、尿道周囲にコラーゲンを注入する方法などがあります。
恥ずかしがったりあきらめたりせず、泌尿器科に相談しましょう。
【過活動膀胱 (OAB)】
過活動膀胱とは、「尿意切迫感を有し、通常これに頻尿および夜間頻尿を伴い、切迫性尿失禁を伴うこともあれば、伴わないこともある状態」と定義されています。
要するに急におしっこが我慢できなくなり、おしっこの回数が多くなる状態です。
正常のものが膀胱に多量の尿(400~500ml)をためたときの尿意と違って、我慢できない急な尿意で、これを尿意切迫感といいます。
原因
原因は大きく分けて、神経因性と、非神経因性に分けられます。
神経因性は、脳や脊髄の障害を原因とするもので、脳血管障害・認知症・パーキンソン病などが原因になります 非神経因性は前立腺肥大症に代表される下部尿路閉塞、女性に多い骨盤底筋が弱くなって起こるものなどがありますが、原因が不明のもの(特発性)も少なくありません。
《診断》
診断は自覚症状に基づくもので、「過活動膀胱症状スコア」(OABSS)が目安となります。
後に掲げましたので答えてみてください。
質問③が2点以上、合計点が3点以上であれば過活動膀胱の可能性があります。
また、他の疾患でも同様な症状が出ますので、区別する必要があります。
除外が必要な疾患として、膀胱炎・尿路結石・膀胱ガン・前立腺ガンなどがあげられます。
《治療》
《薬物療法》
抗コリン薬:最も多く使われます。
ポラキス、バップフォーなどのほか、昨年発売されたデトルシトールやベシケアといった薬は過活動膀胱が適応症として認められています。副作用として口の渇きや便秘になることがあります。また、眼圧が調整できない閉塞性隅角緑内障や胃アトニーがある人などは飲むことができません。また前立腺肥大症などで尿が出にくい人は注意して使う必要があります。
平滑筋弛緩薬:膀胱の収縮を抑える作用のある薬ですが、排尿筋の収縮を抑える作用は抗コリン薬より弱いとされています。
行動療法
ア)生活指導 過剰な水分やカフェインの摂取の制限、トイレ環境の整備
イ)膀胱訓練 少しずつ排尿間隔を延長することにより膀胱容量を増加させる訓練法です。膀胱炎があると悪化させますので、必ず医師の指導の下に受けるようにしましょう。
ウ)骨盤底筋体操 骨盤の底で膀胱や子宮などを支えている筋肉群が緩むと失禁の原因になります。これを鍛えることによって失禁を減らすことができます。
理学療法
干渉低周波療法 これは電気刺激療法の一種で、保険の適応が認められている唯一の治療法です。干渉低周波とは、周波数の近い2種類の電流が交差した場所で新たに生まれる微弱な電流のこと。これにより骨盤底筋を収縮させ、排尿に関する神経も刺激させる。一回の治療は約20分。痛みはほとんどありませんが、繰り返し治療する必要があります。
過活動膀胱症状質問表(OABSS)
以下の症状がどれくらいの頻度でありましたか。この1週間のあなたの状態にもっとも近いものを,ひとつだけ選んで,点数の数字を○で囲んで下さい。
●質問1
朝起きた時から寝る時までに,何回くらい尿をしましたか?
0点 7回以下
1点 8~14回
2点 15回以上
●質問2
夜寝てから朝起きるまでに,何回くらい尿をするために起きましたか?
0点 0回
1点 1回
2点 2回
3点 3回以上
●質問3
急に尿がしたくなり,がまんが難しいことがありましたか?
0点 なし
1点 週に1回より少ない
2点 週に1回以上
3点 1日1回くらい
4点 1日2~4回
5点 1日5回以上
●質問4
急に尿がしたくなり,がまんできずに尿を もらすことがありましたか?
0点 なし
1点 週に1回より少ない
2点 週に1回以上
3点 1日1回くらい
4点 1日2~4回
5点 1日5回以上
合計点数はいくつになりましたでしょうか?
《判定》
質問3の「尿意切迫スコア」が2点以上で
3~5 軽症
6~11 中等症
12以上 重症
血尿
【血尿】
血尿とは尿に血が混じった状態をいいますが、目で見てわかる場合(肉眼的血尿)と検査で初めてわかる場合(顕微鏡的血尿)があります。
尿が赤く見える場合、必ずしも血が混じっているとは限りません。
食品の着色料が尿中に排泄されて血尿のように見えるときがありますので、まず血尿 か否か、血尿以外の尿の異常(蛋白や白血球などが混じっていないか)を調べます。
出血量としては少量のことが多く、これで貧血になることは滅多にありませんが、血尿は症状であって病名ではありませんので、どこから何が原因で出血しているのかを調べることが重要です。
血尿の起こる部位は、尿の通り道、すなわち腎・尿管・膀胱・尿道のいずれかですが、排尿の最初の部分に血尿がみられるときは尿道から出血、尿全体で血尿がみられるときは腎臓や膀胱など尿路の上部での出血が考えられるなど、血尿状態により出血部位を推定することができます。
原因は炎症・結石・腫瘍などほとんどの尿路の疾患で起こり得ます。
主な疾患としては腎・尿管結石、女性では膀胱炎、男性では前立線肥大症があげられますが、いずれも特有の症状を伴うことが普通です。
そのほか見逃すことができない病気として腎や膀胱、前立腺のガンのこともあります。
これは血尿の他に症状がでないことも多いので、血尿が見られたら必ず泌尿器科医に受診することをお勧めします。